第2次トランプ政権と日米関係~トランプ・石破会談を前に~
その開催までの経緯を観ると、日本側がトランプ当選直後のタイミングでの面談を打診したが実現せず、替わりに、短時間の電話会談で体良くお茶を濁された感は否めなかった。
しかし、その後、日本側事務方の努力の甲斐もあり、結局は、大統領就任後初の外国首脳との正式面談と言う形式で、トランプから会談確約を取り付け、先ずは日本を、米国の密接な同盟国としてイメージ付ける、その作戦のスタートは上手く行ったようだ。
だが、問題はこれから…。石破・トランプ両者のケミストリーが合わないのではないかとの不安が拭えない中、両者の会談が巧く進むか、日本側は万全の事前準備に余念がない。
こうした状況下、以下ではトランプ誕生から現在までの時間経過の中で、今回会談の意義をどう考えるか、頭の体操を試みてみたい。
2025年1月21日、米国第47代大統領にトランプ元大統領が返り咲いた。
それから未だ2週間弱、第一期の当選時と同様、この大統領は相変わらずのお騒がせぶりを発揮し続けている(対メキシコや対カナダ関税をかけると言ってみたり、発動を遅らせる、と言ってみたり等々)。
言葉を変えれば、選挙期間中に余りに多くのことを公約したものだから、現在はその約束を実現するために、トランプ流のやり方で、連日、下準備を整えているといったところ(そう言えば、トランプ自伝(出所は日本語版翻訳:筑摩文庫、以下同じ)の中で、彼は、『言葉だけでなく、実行する…世間をだますことは出来ない。
実際にそれだけのことを実行しなければ、やがてそっぽをむかれてしまう』と強調していた)
では、トランプは大統領就任演説で何を言ったか…。てんこ盛りだった選挙公約をどう纏めて、自らの施政方針の中で体系化したのか…。先ずは、そうした点から、彼の就任演説を読み直してみよう。そうすると、概ね以下の3点が浮かび上がる。
既存政治への不信感。高邁な理想よりも、社会的に抑圧された不満層に立脚しての、トランプ特有の現状認識。Liberal的価値への嫌悪。
就任演説:… Our government confronts a crisis of trust. For many years, a radical and corrupt establishment has extracted power and wealth from our citizens while the pillars of our society lay broken and seemingly in complete disrepair…
それ故に、経済政策、外交政策、技術政策、環境政策と言った、謂わば、全ての分野での、これまでの政策の大転換を主張。
就任演説:…Today, I will sign a series of historic executive orders. With these actions,…We will begin the complete restoration of America and the revolution of common sense. It’s all about common sense…。これまでの常識が間違っていたことを強調した上で、具体的に主張したのは以下の諸点(***)。
***①インフレを打破し、コストと物価を迅速に引き下げる為の政策を指示(選挙で勝てた最大要素)、②大幅な減税、③エネルギー資源の採掘促進、④技術政策の大幅変更(グリーン・ニューディルの終了、Climate accord からの離脱、電気自動車の普及策を撤回等々;含むWTOからの脱会)、⑤貿易システムの修復(関税重視、「財源賦課の対象を国民から外国へ」のレトリック:外国歳入庁新設、国境を越えたデジタル課税交渉からの脱退)、⑥外交政策(戦争状態の終結:中東、ウクライナ、同盟体制維持コストの均等分担:数字は明示しなかったものの、巷間伝わるのは、同盟国の防衛費をGNP 比2%→3%→5%?)、⑦行政の効率化と経費削減(政府効率化省、公務員削減等など)
***最優先として、手始めの2手と位置付けたのが「不法移民対策とインフレ・物価対策」。
①先ずは不法移民対策:就任演説…First I will declare a national emergency at our southern border…All illegal entry will immediately be halted. And we will begin the process of returning millions and millions of criminal aliens back to the places from which they came…。
→→早速の実行:トランプ、コロンビア相手に速攻(軍用機を使っての不法移民返還の試みに、コロンビアは受け入れ拒否→トランプは関税賦課の脅し→コロンビアの降参:1月27日)。
しかしこうした行動は、“理念の灯台”を謳った、嘗ての米国ならやらないこと。それ故に、後遺症(中南米・カリブ海諸国共同体内に反発の動き:1月29~30日)も出かけたが、それでも逆に押し切り、結果、米国の影響力を誇示。(「調教師が少しでも弱さや怯えをみせれば、ライオンはたちまち彼に襲いかかるが、彼が鞭をならし、威厳をみせて歩くと、驚くことにライオンは言いなりになる」、トランプ語録)、トランプは後日、受け入れ先の決まらない不法移民をキューバのグアンタナモ米軍基地に収容する方針を発表)。
→→尤も、NYTのデビッド・サンガー記者は、上述のコロンビア案件の顛末と、トランプのデンマーク領グリーンランド購入提案やパナマ運河の米国への返還要求が連動してくる、との憶測記事を書いている(NYT2025年1月27日:Behind the Colombia Blowup ;Mapping Trump’s Rapid Escalation Tactics)。
サンガー記者が記事中で引用する、ユーラシア・グループのブレマー社長のコメントでは、グリーンランドでの、将来の住民投票によって、デンマークからの独立が提案され、最終的には独立したグリーンランドと米国が、同地での米軍基地や資源探査の在り方を協議する可能性が出てくるのだと…。
サンガー記者は、そうした憶測を紹介すると共に、「そんなことがNATO加盟国のデンマークで起こる可能性があること自体、トランプが戦後国際秩序の基本原則を如何に軽く考えているか」の証拠だと指摘する。
→→パナマ運河に関しても、サンガー記者は、ルビオ新国務長官が、初めての外国訪問にパナマのような国を選んだ背景として、不法移民返還問題で何かとざわつく中南米諸国に、米国としての影響力を確保する第一歩とすると共に、訪問時にトランプの運河返還要求に触れる可能性をも示唆する(そして、ルビオは実際に触れた)。ここら辺りに、力による外交を推進するトランプ流が現れていると…。つまりトランプは本気なのだと…。
②次いでインフレ・物価対策を観てみよう。就任演説… Next, I will direct all members of my cabinet to marshal the vast powers at their disposal to defeat what was record inflation and rapidly bring down costs and prices…。一期目政権との違い、二期目は自分に考えが近い適格者を、それぞれの要路に据えている、イメージとしては、長良川の鵜飼いの如く担当閣僚を操作するつもり。
就任演説:… From this day forward…we will be the envy of every nation…, My recent election is a mandate to completely and totally reverse a horrible betrayal… I was saved by God to make America great again…National unity is returning to America… We will forge a society that is colorblind and merit-based。
彼の、この自尊心に関して、下記のような諸点が各種マスコミや研究機関から指摘されている。
***「世界を乱す米大統領の自己愛」:トランプの人格分析、“マイヤーズ・ブリックス指標による分類わけ“でトランプを理解しようとすると、「外交的で、実体験から物事をとらえ、判断は共感よりは実利を、行動は原則よりは状況を優先する。この型の人間は、大胆で精力的だが、目立ちたがり屋で飽きっぽく、思いやりを欠き、規律を軽んじ、衝動的に行動する面もある」(日本経済新聞1月21日)
***「トランプ再登場で、変わる世界」:欧州外交評議会が実施した世論調査結果を見ると、トランプ再登場で最も動揺しているのは、米国と親密な関係を保っている同盟各国の市民だと判明…彼の大統領復帰が自国にとって良いことだとの答えは、EUでは22%、英国で15%、韓国で11%。
対してインドでは84%、サウジアラビアで61%、ロシアで49%、中国で46%、ブラジルで43%(Financial Times1月22日)。要するに、こうした結果が出るのも、専制体制の国の国民の方が、トランプ的な指導者に慣れているからだろう。(「大事な取引をする場合は、トップを相手にしなければラチがあかない」トランプ語録。だからトランプは、「自分も、相手と同様の力を持っていなければならない」と、恐らくそう考えている)。
大統領選再挑戦に際し、トランプは先ず、1期目以降、自らの岩盤支持層を構成するようになっていた“忘れ去られた人々”(重厚長大型の従来型製造業従事者達:その大半は非大卒の男性従業員やその家族)の支持を一層固める路線を採った。そのために、選挙の公約も当然、Make America Great Againに…。
この強固な地盤に、株式資本主義の下で、起業や革新的経営で富を築いた金満層(イーロン・マスクやヴィヴィック・ラマスワミ等)の強い支持を組み合わせることに成功。この異質な2つの層の結合が選挙戦勝利の鍵となった(「普通の人には考えられないようなことを要求する度胸と図々しさが必要」、「良くしてくれた人には、こちらも良くする」、トランプ語録)。
***「…米国の社会分断は益々ひどくなっている。所得格差は今や資産格差を生み出し、為に米国社会内には大きな不平等と低中所得層の大きな不安が、規制緩和と低税率を求める超裕福層との、本来なら有り得ない連携を生み出した。
その両者を紡ぎ出したのがトランプの現状打破的な姿勢で、それが今回の彼の再選の原動力だった…この分析が正しければ、米国の産業構造転換による脱工業化と、それを促進している金融の抑制なき拡大が、トランプ再選という奇跡を成し遂げさせた社会的要因だったということになるわけだ…」(Financial Times2024年12月4日)
トランプ再選の根本に、米国社会の大きな分断という事実がある。それ故、「社会が悪い方向に向っている」と認識する有権者が6割を占めている。「米国は今や、慢性的に、社会の先行きを不安に感じる国なってしまっている」(NYT 2024年10月調査)
***36年前の、1988年選挙で共和党のパパ・ブッシュが選挙運動のテーマ曲にDon’t worry, be happyを採用したのと比べると、この社会のムードの違いは一目瞭然。
***現状への不満や不安は、当然、政権党の政策に向けられる。バイデン政権の経済運営が、他の諸国のそれよりも巧く行っており、米国経済が他国のそれに比して力強いものになっているのに、食品価格や家賃、ガソリンや医療費の高さ故、有権者は、自分たちが、同じ社会の他の層と比べて、不利な立場に置かれていると不満を感じる。
資産格差がそれ程開いてしまったのだ。その不満の度合いは、低所特者の方が当然大きい。「こうした社会に誰がした」のだと…。トランプの岩盤支持層はこのようにして生まれた。
***米国で所得格差の域を超え、資産格差が急速に大きくなり始めたのは、恐らく2000年代初めの頃から。
2004年の大統領選挙で再選を果たしたブッシュ(息子の方)は、米国人が退職後に依拠すべき公的年金制度の改革の方向性として、年金積立金の株式投資運用を許容する方向性を打ち出し、Ownership Societyという新概念を強調した→→株式資本主義化の波と共に、株を保有する者と保有しない者との資産格差は眼に見えて拡大→→金融投資立国を目指す日本も、あと20有余年もすれば、米国並みの資産格差社会になってしまうのでは?
ネット選挙の本格化。その波に乗って、トランプ自身が不確かな、或る意味、真実に基づかない情報を大量拡散、大手マスコミは、それらのFact Checkを行なったが、トランプ支持者はそうした動きそのものを反トランプのための陰謀だと決めつけた。つまり、そこには、世論調査大外れと相俟って、ネット世論に大手マスコミが敗北した構図が鮮明に浮かんでくる。
そんな状況下、著名紙ワシントン・ポスト紙の読者向けメッセージも、社主Jeff Bezos;(Amazon創設者)の意向で、これまでの“Democracy Dies in Darkness”から、新しく“Riveting Storytelling for All of America”に変更された。その心は、もっと労働者にも読まれるような新聞になれ、というもの。リベラル派はこんな処でも立ち位置を脅かされている。
米国政治史の視点から、トランプ再登場を観ると、ルーズベルト革命(1932年当選:New Deal、新規まき直し)、レーガン革命(1980年当選:小さな政府、政府こそ諸悪の根源)、そしてトランプ革命(2024年再選:本稿冒頭のような問題意識、Our Government confronts a crisis of trust…)と続き、社会における政府の在り方を軸とした、有権者の認識が大きく変遷している事実が明らかとなる。
***それぞれに45年前後の期間の後、次の革命に移行(ルーズベルトの大きな政府の行き着いた果て、政府を支え切れなくなった中産階級の反乱=レーガン革命。小さな政府と市場遵奉のレーガン革命の果て、資産格差に起因する社会の分断=その分断がもたらしたトランプ革命)
***共通するのは、直前に発生していた米国社会の困窮と分裂。対応策としての新しいやり方。それ故、事の本質に於いて、重視すべきは対外政策よりも国内政策。
採用すべき経済理論も、ケインズ経済学→市場遵奉の新自由主義経済学→重商主義貿易論(競争相手から生産手段を奪い取り、他国に自国向けの生産必需物資の輸出価格を引き下げさせる。関税はそのための武器:ピーター・ナバロ)へと、変化してきている。
世界政治の観点から…。この視点からは、覇権国の交代が顕著である。19世紀後半からの英国覇権下のグローバル化が、第二次大戦後、基軸エネルギーが石炭から石油へ転換し、米ソ冷戦が激化する中、理念の大国米国が、グローバル化の推進役の座に座ることになる。
そして今日、トランプの再選は、そうしたグローバル化を推進してきた米国が、推進役を降りたことを示す。
つまり、米国は犠牲になってきた、とのトランプの認識(米国第一主義思想)が米国社会に蔓延しているのだ。そんな米国社会の在りようを観て、世界はむしろ、米国に代わって、中国にその指導的役割を求め始めた兆候も見受けられる。具体的には、中国やロシアが中心に座る、グローバルサウス世界の拡がりである。
逆に観れば、トランプ再選は、むしろ、そうした世界の潮流への米国的対応(謂わば、巣籠もり)としても理解出来るのではないだろうか…。
***The Price of Trump’s Power Politics(Foreign Affairs Jan 30, 2025)
… Trump turns to threads to pressure friends and neighbors, as a result, Washington will almost surely lose some ability to attract support…Trump does not offer other countries new opportunities; he demands concessions. Beijing by contrast, is eager to do business around the world…It speaks the language of win-win outcomes…To earn Trump’s respect, US allies must demonstrate strength…Trump sees few significant US interests outside the Western Hemisphere… His view is a Thucydidean world view—one in which “the strong do what they can and the weak suffer what they must”
… First the allies must recognize that the era of Pax Americana is over, and the era of power politics has returned. The one thing Trump understands is power (トランプ語録:「こちらが弱いとみると、高飛車に出る相手には、相手の権威は認めるが、彼を恐れていないと言うことを知らせる必要がある。この兼ね合いは微妙だが…」)。
***トランプの思考は常に、自らが不利な状態、或は不可避な難問に直面しているとの認識から始まっている。そんな想定の下、敵対者にどうすれば勝てるか…、言換えると、彼は、日本流の横綱相撲は取れない。例えば、相互主義的貿易論は語れても、開かれた世界経済といった理念は語れない。つまり横綱相撲は取らないし、取れない。
先ずは、世界にも稀な日本の地政学上の特殊性(ロシア、北朝鮮、中国という、世界の自由主義にとっての3大脅威と、直接対峙を地理上余技なくされている、数少ない国)を何度も強調する必要がある。この点で思い出すのは、レーガン大統領と初めての首脳会談を実施したときの中曽根総理の「日本列島不沈母艦」発言。
この地政学的認識は、恐らく今日のトランプ政権も共有しているはず。つまり、日本も米国もほぼ同じ地政学リスクに直面しているのだと…。
中国の習近平主席は、2013年頃に米中新型大国関係認識を打ち出し始めた頃から「太平洋は米中両国を受け入れるに充分に広い」と発言し始めた。
習主席は、この言葉を米国との共存の意味に用いたのだろうが、その後の米国の対中脅威認識の増大の下では、この中国の言い回しを、米国はSea-Powerたる自国の太平洋での覇権を脅かす言葉と取っているはず。その意味で、米国と日本は、安全保障上の利害を、かつてないほど共有出来る状況が依然継続している。
この脈絡では、石破首相は、自衛隊と米軍の連動可能性を一層強め、それらに伴う、更なる国防費の増額を図る意志を強調する等といったことも、事前準備された総理発言要項の中に、選択肢として、当然に入っているのではないか…。
焦点となる米国の貿易赤字問題では、日本は恐らく第4番目ぐらいの位置付け。尤も、最大標的の中国、2番手のカナダやメキシコ、そして3番手のEU位までは、トランプによって確実に、関税賦課の脅しの標的になるだろうが、4番手の日本はどうなるか…。
更に、新日鉄問題…。ここら辺りまで来ると、この会談で石破総理がトランプ大統領の懐にどれだけ飛び込めるかが、大きな勝負処となるのではないか…。
いずれにせよ、日米首脳会談設定までは、日本の事務方は極めて上手く事を運んだように見える。米国の新国務長官が承認された直後に、日本の外相が直接面談し、更にその後にクアッドの外相会談に米国の国務長官を引き込んで、素早くアジアの安全保障環境での認識一致を迫る(ここら辺りには、バイデン時代の米国務省官僚の生き残りが、トランプ登場の国際情勢への悪影響を少しでも減らしておくために、意図的に仕組んだ思惑があるのかもしれない)。
或は、米国の新国防長官が議会承認を得るや、日本の防衛大臣が新長官と電話会談を開き、同じような認識共有を図る。譬えれば、将を射ようとすれば、先ず馬を射よ、の実践というわけだろう。先ずは外堀を埋めた、と言換えても良いだろう。
後は、日本側事務方としては、総理の手許にトランプ説得材料(防衛費、日本の米国経済への貢献、対米投資による雇用貢献等々)を大量に持たせ、総大将たる石破総理がそうした材料を駆使して巧くやってくれるのを念じるばかり…。
トランプ大統領は若い頃、ニクソン大統領に共鳴するところが多く、両者の間に手紙のやり取りがあった由。そうした背景からか、「両者の政策や選挙戦略は奇妙なほど類似している」と、日本経済新聞の原田論説フェローは指摘する(同紙2025年1月27日)。例えば、外交で自らの手中を晒さず、相手方を予測不能な状況に陥らせる…。
或は、米国を、国際秩序維持コストを一身に引き受けさせられる被害者として位置付ける…。更には、国内世論の分断を自らの選挙に利用する等々…。
だとすれば、石破首相はトランプとの会談の端々に、折に触れニクソンの言葉、例えば「真の政治家は、陰謀の時と誠実の時とを使い分けねばならない」を引用し、「その上で、願わしくは、日本はトランプ大統領の誠実な交渉相手として扱われたい」と口に出し、「指導者は、明日戦うために今日は妥協しなければならない」等を引用したりするのも、有りではないだろうか…。
ニクソンは自著とされる「指導者とは」の中で、「客を飽きさせた瞬間が身の破滅と言うことを、政治家は映画スターや映画会社の社長以上に良く承知している」と書いた。
そんなニクソン類似の心象世界を持つトランプに、日米首脳会談でそれなりの座を用意しながら、トランプの立場が立つように配慮すると共に、日本の国益をも守る。石破首相の真髄は、そんな処にこそ発揮されねばならない。
***新日鉄問題で、仮にトランプを翻意させれば、石破総理にとっては大きなプラス。新日鉄の、USステール買収に際しての各種誓約の確実な実行を、トランプの依頼の形を取って、日本政府が何らかの形で保障することなどが出来れば最高なのだが…。
しかし、恐らくトランプは将来、米国の重厚長大型産業の労働組合を、トランプ共和党支持に鞍替えさせたがっている(筆者の推測ではあるが…)。そんな思惑がトランプの心の底辺にあるとすれば、これは難問。
***米国との間の貿易赤字問題等では、ベトナムも当然対象に浮上すると思われるが、今のところ、トランプ大統領のベトナムへの言及はない。これなども、トランプは主敵中国をこれから相手にする場合の、損得の判断故ではないか…。
カナダやメキシコへの関税賦課の脅しも、不法移民問題への対処や中国からの薬物フェンタニルの、両国を通じての中国からの不法流入に、適切な防止策を講じていないことを理由に挙げている。要するに逃げ道を用意している。こうした諸々に、荒削りなトランプの作戦の片鱗が読み取れるようではないか…。
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